大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋地方裁判所 昭和63年(行ウ)32号 判決

名古屋市南区呼続一丁目三番八号

原告

根木卓也

右訴訟代理人弁護士

高橋貞夫

名古屋市熱田区花表町七丁目一七番地

被告

熱田税務署長

松木忠男

右指定代理人

深見敏正

関戸美朗

谷端勉

石川誠治

主文

本件訴えを却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告が昭和六二年三月一二日付でした原告の昭和五八年分、同五九年分及び同六〇年分の所得税の各更正及び過少申告加算税賦課決定処分(ただし、昭和五八年分及び同五九年分については、いずれも異議決定により、同六〇年分については異議決定及び審査裁決により一部取り消された後のもの)をいずれも取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する本案前の答弁

主文の判決を求める。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告の昭和五八年分、同五九年分及び同六〇年分の所得税について、原告のした確定申告及び修正申告、被告のした更正、過少申告加算税賦課決定処分(以下「本件処分」という。)及び異議決定並びに国税不服審判所長のした審査裁決の経緯は、別紙記載のとおりである。

2  しかし、本件処分は、原告の所得を過大に認定したもので、違法である。

3  よつて、原告は、被告のなした本件処分(ただし、昭和五八年分及び同五九年分については異議決定により、同六〇年分については異議決定及び審査裁決により一部取り消された後のもの。)の取消しを求める。

二  被告の本案前の答弁の理由

1  原告は、被告の昭和六二年三月一二日付本件処分に対し、同年五月九日に異議申立てをしたところ、被告は、同年八月一九日付をもつて、本件処分の一部を取り消す旨の異議決定をした。

2  原告は、右異議決定を不服として、昭和六二年九月一八日、国税不服審判所長に対し、審査請求をしたところ、同所長は、同六三年六月二九日付で、昭和五八年分及び同五九年分についてはいずれも棄却する旨の、同六〇年分については一部取り消す旨の裁決(以下「本件裁決」という。)をし、同裁決書謄本は、同六三年七月六日、原告に送達された。

3  ところで、行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)一四条四項、一項は、審査請求に対する裁決を経た処分の取消しを求める訴えは、裁決のあつたことを知つた日又は裁決の日から起算して三か月以内に提起すべきことを規定しており、この期間の計算については、当該裁決のあつたことを知つた日又は裁決の日を初日に算入すべきである。そして、原告は、前記のとおり、本件裁決書謄本の送達を受けた昭和六三年七月六日に本件裁決のあつたことを知つたものと認められるから、遅くとも同年一〇月五日までに訴えを提起すべきところ、本件訴えは、同月六日に提起されているから、出訴期間経過後に提起された不適法なものというべきである。

三  被告の本案前の答弁の理由に対する原告の認否

1  被告の本案前の答弁の理由1、2項の各事実はいずれも認める。

2  同3項は争う。

行訴法一四条四項、一項の出訴期間の計算については、当該裁決のあつたことを知つた日又は裁決の日を初日に算入すべきものではないから、本件訴えは、適法である。

理由

一  被告の本案前の答弁について審案するに、被告の本案前の答弁の理由1、2項の各事実はいずれも当事者間に争いがなく、これによれば、原告は、本件裁決書謄本の送達を受けた昭和六三年七月六日に本件裁決のあつたことを知つたものと認められる(最高裁昭和二五年(オ)第一八号、昭和二七年四月二五日第二小法廷判決・民集六巻四号四六二頁参照)。

ところで、行訴法一四条四項、一項の定める出訴期間の計算については、当該裁決のあつたことを知つた日又は裁決の日を初日に算入すべきものである(最高裁昭和五一年(行ツ)第九九号、昭和五二年二月一七日第一小法廷判決・民集三一巻一号五〇頁参照)から、原告は、遅くとも昭和六三年一〇月五日までに訴えを提起すべきものであつたところ、本件訴えが同月六日に提起されていることは記録上明らかである。

二  よつて、本件訴えは、出訴期間を徒過した不適法なものであるから、これを却下することとし、訴訟費用の負担につき、行訴法七条、民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 浦野雄幸 裁判官 加藤幸雄 裁判官 岩倉広修)

別紙

〈省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例